スタッフの無断欠勤や突然の退職に飲食店が取るべき対応
飲食店では、スタッフが突然辞めてしまったり、連絡のないまま出勤しなくなったりするトラブルが少なくありません。
人手不足のなかで大きな痛手となりますが、感情的な対応はかえって法的なリスクを招きます。
本記事では、飲食店スタッフの突然の退職や無断欠勤への対処法について説明します。
スタッフの突然の退職に対してできること
まず、退職を申し出たスタッフに対して店側が取り得る対応を整理します。
退職を止めることは基本的にできない
期間の定めのない雇用契約では、民法627条1項により、スタッフは退職を申し入れてから2週間が経過すれば契約を終了させることができます。
就業規則で1か月前までの申し出を求めていても、民法の規定が優先されると考えられているため、退職自体を止めることはできません。
一方、契約期間を定めたアルバイトの場合には、やむを得ない事由がなければ期間の途中で退職できないのが原則です。
もっとも、実際に本人の意思が固いときに勤務を強制する手段はなく、引き継ぎへの協力を求めながら退職日を調整するのが現実的な対応といえるでしょう。
損害賠償の請求は現実的ではない
急な退職によって営業に支障が出た場合でも、スタッフへの損害賠償請求はハードルが高いのが実情です。
損害の発生や退職との因果関係を店側が立証しなければならず、請求が認められた事例でも金額は大きなものとはならない傾向にあります。
また、退職に対して罰金を科す定めや、賠償額をあらかじめ決めておく契約は、労働基準法16条により禁止されている点にも注意が必要です。
訴訟の負担も踏まえると、賠償請求よりも人員体制の立て直しに力を注ぐ方が建設的といえます。
無断欠勤が続く場合の対応
連絡のないまま欠勤が続く場合には、次の手順で段階的に対応を進めます。
まずは安否と欠勤の理由を確認する
無断欠勤が始まったら、最初に本人へ電話やメッセージで連絡を取り、安否を確認しなければなりません。
ひとり暮らしのスタッフが自宅で倒れているケースや、事故に巻き込まれているケースも考えられるためです。
連絡がつかないときは、緊急連絡先の家族への連絡や自宅への訪問も検討しましょう。
また、欠勤の背景に精神的な不調がうかがわれる場合、確認をしないまま解雇すると不当と判断されるおそれがあります。
本人と話ができたときは、欠勤の理由と確認した日時を記録しておくと、後の対応の裏付けとして役立つでしょう。
書面で出勤を促し記録を残す
本人と連絡が取れない状態が続くときは、書面による出勤の督促に切り替えます。
内容証明郵便を利用すれば、いつどのような通知をしたかを証明できるため、後の紛争に備えた証拠として有効です。
あわせて、対応の過程では次のような記録を残しておきましょう。
- タイムカードや勤怠システムによる欠勤日数の記録
- 電話やメッセージで連絡を試みた日時と内容
- 督促の書面を送付した日付とその写し
こうした記録は、後に解雇の有効性が争われた際に、店側が適切な手順を踏んだことを示す資料になります。
解雇は最後の手段として手順を踏む
督促にも応じず欠勤が続く場合であっても、直ちに解雇へ進むのは危険です。
労働契約法16条は、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を欠く解雇を無効と定めています。
実務では、正当な理由のない無断欠勤が2週間程度続き、督促にも応じない状態になって、はじめて解雇が認められやすくなるのが一般的です。
解雇する場合には、労働基準法20条に基づき30日前の予告か解雇予告手当の支払いが必要となります。
労働基準監督署の除外認定を受けたときは即時の解雇も可能になりますが、認定を受けるには厳格な要件と証拠が必要です。。
なお、就業規則に一定期間連絡が取れない場合は退職とする旨の自然退職の規定があれば、解雇によらずに契約を終了させる選択肢もあります。
対応する際の注意点
退職や無断欠勤への対応では、店側が法令違反を犯さないことも重要になります。
働いた分の給料は支払う必要がある
突然辞めたスタッフに対しても、働いた分の給料は全額支払わなければなりません。
労働基準法24条が賃金の全額払いを義務付けており、迷惑をかけられたからといって支払いを拒むと、店側が法令違反を問われる立場になってしまいます。
就業規則に定めがあれば減給の制裁を科す余地はありますが、労働基準法91条により、1回の額は平均賃金の1日分の半額まで、総額は一賃金支払期の賃金総額の10分の1までという制限がある点に注意しなければなりません。
本人が給料を受け取りに来ない場合には、供託により支払い義務を果たす方法もあります。
就業規則を整備しておく
同様のトラブルに備えるためには、就業規則の整備が欠かせません。
定めておきたい事項には、次のようなものが挙げられます。
- 退職を申し出る時期と手続きに関する規定
- 無断欠勤を懲戒事由とする規定
- 一定期間連絡が取れない場合の自然退職の規定
規定は作成するだけでは足りず、スタッフへ周知されていなければ効力が認められない点にも注意が必要です。
日頃から面談や声かけを通じて不満や不調を早めに把握することも、突然の退職や無断欠勤の予防につながります。
まとめ
飲食店スタッフの突然の退職や無断欠勤に対しては、感情的に対応せず、記録を残しながら法律に沿った手順を踏むことが損失を抑える近道です。
MSみなと総合法律事務所では、飲食店の労務トラブルに関するご相談を承っております。
スタッフの退職や無断欠勤への対応でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。